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【ネタバレあり】映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』(さよ朝)感想 非の打ち所が無い素晴らしい作品

はじめに

2日前の2月24日(土)に公開されたばかりの作品でありながら、先行上映会や正式公開直後2日の間に、既に多くの方が感想を投稿されている、みなさん大注目の作品ですね。

特定の作品の感想をきちんと書いてみるという取り組みは初めてで、上の状況も踏まえ実は緊張していたりもするのですが、勉強も兼ねて出来る限り他の方の感想や資料などは読まずに書いてみます。

ツッコミどころ満載な気がしていますので、気になる点があれば是非コメント頂ければと思います。

評価

総合

100点(100点満点中)

今作の評価軸

評価軸 5段階評価
背景・色・作画 ★★★★★
設定・世界観 ★★★★★
テーマ・ストーリー・構成・キャラクター ★★★★★
音楽 ★★★★★

要約

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漫画『干物妹!うまるちゃん』より

第一印象


映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』予告編

今作の監督は、脚本家として有名な"マリー"こと岡田麿里さん。
岡田麿里監督は、これまでTVアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』や『心が叫びたがっているんだ。』の原作を担当しており、『君の名は。』のキャラクターデザインで有名となった田中将賀さんら、多くの著名な方々と一緒に作品を裏から支える立場に徹してきましたが、本作は初監督作品という事でした。

予告編を見た際にまず感じた印象としては、TVアニメ『クジラの子らは砂上に歌う』(クジ砂)に大変似通っているなという事でした。


TVアニメ『クジラの子らは砂上に歌う』 PV第2弾

両作は「閉鎖的な空間で独自の文化を営む人々が、物語序盤に突然戦火に巻き込まれ生活が脅かされてしまう」というストーリーや世界観の共通項を持っていますが、
クジ砂に至ってはその直後の展開が単調であったり*1、横暴な性格を持つ癖の強すぎるキャラクターによって、折角の自然な世界観が台無しになってしまった印象を持っていて、本作もクジ砂の二の舞いにならないか危惧を感じており、元々期待値はそこまで高くありませんでした。*2

背景・色・作画

上映開始早々驚かされたのは、新海誠監督作品『君の名は。』に劣らず勝る素晴らしい背景でした。


「君の名は。」予告

物語冒頭は、主人公「マキア」たち一族の故郷「イオルフ」の様子が映ります。
白い建物と青い水辺*3は、エーゲ海に浮かぶギリシャサントリーニ島を思い起こさせ、また建物の一部に茂った緑は、東京幻想さんの幻想的な廃墟イラストを想起させます。
単に美しい世界であるという事に留まらず、長寿の一族が過ごした長い時を感じさせてくれます。

君の名は。』では、主に現実の世界背景が圧倒的な書込み量で作り込まれており、当時としては他に類を見ない仕上がりで「リアルよりもリアルっぽい」と驚かれた方も多いと思います。
本作で描かれる世界はあくまで空想のものですが「実際にこういった世界があったら、写真にはこのように映るだろう」と思わせる「忠実なリアルさ」が感じられ*4、スクリーンの圧倒的な世界に引き込まれました。*5

君の名は。』以降、背景の作画面においては、TVアニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』や本作のように、明らかに影響を受けた作品が少なくないですが、単に作画にリソースを投じただけではない独自性がありました。


「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」 Violet Evergarden CM

設定・世界観

本来、背景のみで世界観が表現し切れる事は殆どないと思いますが、上記の通り背景のみで世界観が伝わってくる事が、本作の素晴らしい特徴の1つと言えるだろうと思います。
もちろん、世界観の表現は静の背景のみに留まりません。

「イオルフ」の一族は長寿であり、例えば「長老」と呼ばれる一族の長の年齢は400歳と紹介されていました。
ファンタジー作品に良く登場するエルフのように、人間と比べ耳が長いといった致命的な外見差異は無いものの、
上に挙げた長老の見た目は人間換算で30歳〜40歳程度だと思われ、主人公「マキア」のような特に若い世代の「イオルフ」にとっては、人間社会と長い間共生する際問題となりえます。*6
人間にとって、長寿である事は一般的にポジティブに捉えられますが、人間とは別格の寿命により、本作では伝説化されたり虐げられる原因となりました。

この設定の絶妙なバランス感*7が、本作の世界観やストーリーの出来の良さに直結しているのではと感じました。

また、「ヒビオル」と呼ばれる織物や、「レナト」と呼ばれる巨大なドラゴン、花や草原が広がりヤギや犬がのどかに暮らしている「ヘルム農場」、超巨大な水車が周り多くの煙突が備わった鉄鋼業都市「ドレイル」など、
中世欧州をベースとした、ベタなファンタジー要素をふんだんに用いた世界観は、視聴者の世界への理解を妨げず、物語へ没入させる導入剤となっているだろうと考えます。

テーマ・ストーリー・構成・キャラクター

本作で最も評価すべき点はこのテーマ・ストーリー・構成・キャラクターだと考えています。*8

国産作品でありがちな点として、話があちこちに行ったり来たりしてしまい、結局この作品は何が言いたかったのか分からない、といった状況に陥る事は少なく無いと感じています。

特に本作は長編作品であり、時間が長くなればなるほどそういった状況に陥る可能性が高いといえますが、蓋を開けてみれば無駄に感じるシーンがほとんど無く、テンポよく楽しめた事。
また、メッセージが普遍的でありとてもわかり易く、国産作品とは思えない明瞭さであった事が、良い意味で期待を裏切られる形となりました。

本作のテーマは「別れ」です。
親との別れ、「イオルフ」との別れ、「ヘルム農場」のみんなとの別れ、「エリアル」との別れ…
それらの別れの理由について、本作ではほとんど言及される事がありません。さもそれが当たり前であり運命であるかのような扱いです。

ただ逆に捉えると、そういった常に降りかかる運命を受け入れ、自分なりに前向きに生きる登場人物たちのポジティブさを感じる事が出来ます。
結果的に、この作品ならではテンポ感やメッセージの明瞭さは、 Why にあえて触れないからこそ、際立っていたのかなと思います。

また、多くの「別れ」がありながら、登場人物たちが前向きに生きることが出来たのはなぜでしょうか。
一見親子愛と捉える事も出来そうですが、「マキア」と「エリアル」はお互い血が繋がっておらず単なる親子の話ではありません。
また、長寿「イオルフ」と短命人間の異性間の話であり、見方によっては恋愛と捉えられる事も出来ます。*9
親子愛でもなく恋愛でもない。でも「マキア」の愛情の話である事は確かとなると、そのどちらにも共通するのは人間の「普遍的な愛情」。これが上の答えであり、本作で伝えたいメッセージなのだと捉えました。

一人ぼっちの「マキア」を支えた長老「ラシーヌ」、2人が自立するまで面倒を見た「ミド」、メザーテの軍人に襲われそうになったところを助けた「バロウ」、そして「エリアル」を育てきった「マキア」。

「別れ」がテーマであり、全体的にネガティブな話でありながらとてもそうは思えないのは、この作品全体をまとっていた「普遍的な愛情」に、皆が幾度となく救われていたからなのだと思います。

終盤は感動的なシーンが続き、思わず泣かせられてしまいました。

音楽

実は視聴中、BGMを意識する機会はほとんどありませんでしたが、エンディングになりやっと音楽を意識する事になりました。

エンディングの「ウィアートル」は本当に良かったです。この1曲の為にサントラアルバムを購入した程です。

rionos さんの透き通るような歌声は、CLANNADの主題歌「小さなてのひら」の歌手でウィアートルの作詞を担当された riya さんの歌声を彷彿させました。

話を戻しますが、BGMについての考え方はこの記事が分かりやすいかもしれません。

ure.pia.co.jp

本作は2時間と長編でしたが、その間ずっとBGMの存在を意識せずに視聴出来た体験はとても貴重だったと思います。

総評

普段から何かと作品の評価を行っており、これまで100以上のアニメ作品を視聴してきましたが、100点満点中100点が素直に付けられるような作品には出会ったことがありませんでした。
100点が付けられない理由として、一度100点を付けてしまうとそれが今後の絶対的基準になってしまうという意識がありますし、そもそも目に見える範囲・意識せざる得ない部分で何かしら欠点要素が見つかることが大半です。
また、満点である説明の難しさもあるかと思っています。
ただ本作に関しては本記事の通り、様々な要素を考慮しても自分の中で欠点らしき欠点は見つかりませんでした。

今後、他の方のご意見や公式資料などを読み込むと、また違った評価になってくるのかもしれませんが、現時点では単なるマリー信者である訳でも誇張でもなく素直な評価である事を補足しておきます。

非の打ち所が無い素晴らしい作品でした。

sayoasa.jp

お気に入りシーン

外が気になり窓から外に出る「マキア」のシーンです。
高所から飛び降りる勇気が無いことはその前に描かれており、単なる引っ込み思案である事も想定出来ましたが、このシーンが描かれたことで、必要な時は前にまっすぐ進むことが出来るキャラクターである事が見て取れました。
冒頭から作品に対して幸先の良いポジティブな印象を得ていました。

おわりに

これまでも様々な映画やアニメを視聴してきましたが、感想をアウトプットするモチベーションが無いわけではなかったものの、中々重い腰が上がらず機会を逃してきました。

25日に本作を視聴しましたが、記事タイトルに記載したように非の打ち所が無く、ここまで素晴らしい作品は無いだろう、
この機会を逃したらブログを書くタイミングは二度と訪れないだろうと奮起しブログ開始と本記事執筆に至った次第です。

僕自身、それだけ思いが詰まった作品ですので、アニメのファンの方には是非見て頂ければと思っています。

拙い文章ではありましたが、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

*1:戦火の状況をしっかり描いているにも関わらず、あまりにも一方的で状況に変化が生まれる気配が無さ過ぎました。

*2:そもそも、あくまで別作品である事と、クリエイター陣が異なる事をきちんと意識していれば、危惧する必要も無かったのですが。

*3:本作はフィヨルド

*4:写真の世界の中でイラストが動いてるかのような奇妙な印象すら受けました。

*5:特にメザーテの王宮の床に反射した光の表現はずば抜けてました。

*6:数年過ごしても見た目がほとんど変化せず、 異種族である事が疑われるため。

*7:ポスターにも描かれたメインビジュアルがこの作品をしっかり表現していて本当にうまい!

*8:本来はそれぞれ4つの要素に対して個別に言及すべきなのかもしれませんが、内容が複雑に絡み合っていて、上手く分解する事が出来ませんでした。

*9:「ラング」の「マキア」への告白が、同世代である「エリアル」のそれを示唆しています。